会長ごあいさつ


会長プロフィール

三枝昻之

1944年、山梨県甲府市生まれ。

歌誌「りとむ」主宰。

山梨県立文学館館長。

宮中歌会始選者。

2008年から日本歌人クラブ中央幹事。

2010年から日本歌人クラブ会長代行。

2014年、日本歌人クラブ会長に就任。

 

歌集『やさしき志士達の世界へ』、『水の覇権』(現代歌人協会賞)、『甲州百目』(寺山修司短歌賞)、『農鳥』(若山牧水賞)、『天目』、『それぞれの桜』など、

歌書に『昭和短歌の精神史』(やまなし文学賞・斎藤茂吉短歌文学賞・芸術選奨文部科学大臣賞・日本歌人クラブ評論賞・角川財団学芸賞)、『啄木-ふるさとの空遠みかも』(現代短歌大賞)など多数。

  



出発にあたって

  日本歌人クラブ会長 三枝昻之

 

 久しぶりの選挙を経て新しい中央幹事による三年間がはじまりました。

 日本歌人クラブは秋葉四郎会長の二期六年間で大きな組織整備を行いました。二点だけ上げると各ブロックと連携して行う短歌セミナーと財政の健全化です。前者は短歌愛好家を支えながら短歌のすそ野を広げるという日本歌人クラブの役割を実践する企画として、毎年大きな成果を挙げてきました。財政の健全化も不可欠の課題でした。こうした改革を経て、日本歌人クラブはわが国最大の歌人団体でありながら、十二のブロックの活発な活動もあり、時代に相応しい、機敏で風通しの良い組織となりました。

 こうした成果をどう受け継ぎさらに活発にしていくか。新しい中央幹事会に課せられた使命ですが、そのことを自覚したチーム作りが出来たことを心強く思っております。

 しかしながら、伝統詩短歌をとりまく環境は年々厳しくなっております。古典はおろか戦後文学も顧みられなくなる文化状況、ネット社会の拡大による活字文化の危機、超高齢化による各種団体の会員減。多くの短歌結社を直撃しているこれらは、短歌の裾野を支える大衆的な組織であるわが歌人クラブへの影響はより大きいといえます。

 こうした構造的な困難を視野に入れながらの三年間となりますが、それ故に強い使命感を持ってことにあたる必要を感じています。

 短歌は人々が暮らしの中の想いを託す日記代わりの詩型であり、前衛短歌のような表現の新しい極北を目指す芸術であり、パズルのように言葉遊びを楽しむ楽しいグッズでもあり、なによりも一千四百年の蓄積を持つ日本文化の背骨ともいうべき詩型です。

 思い出すのは柳田国男の「短歌はおもやいもの」、つまり国民共有の財産という理解です。芸術という尺度だけでは間に合わない詩型だから、日記代わりも言葉遊びも大切なのです。日本歌人クラブの活動は柳田と遠くで呼応していると感じます。

 みなさんの遠慮のない叱咤と、そしてあたたかい支えをお願いいたします。 

(2014年6月)